【比重と運賃負担力】海外通販で買うとお得な商品は何か考察してみた
物流観点で重要な「比重」と「運賃負担力」
海外原産の商品を日本で購入するなら、その前に絶対に輸入という物流プロセスが入ります。
そして、そこでかかる2大物流コストは運賃と関税です。
運賃は一度に多く運ぶ(大ロット)ほど、規模の経済が働いて安くなります。
これは、個人による海外通販が輸入販売業者に比べて不利になる点です。
それに対して、関税は個人による海外通販の方が有利になる場合があります。
特定原産地証明書を取得して減税/免税で輸入できる場合は輸入販売業者が有利になりますが、それ以外の場合は総じて個人による海外通販の方が有利です。
詳しくはこちらをご覧下さい。
関税や消費税を節税しながらお得に個人輸入できる条件をまとめてみた。
今回は個人による海外通販の方が一般に不利とされる運賃について、そのディスアドバンテージが小さくなる商品は何かについて考察してみました。
キーワードは「比重」と「運賃負担力」です。
比重
運賃は実重量だけで決まるものではありません。
サイズを重量に換算した容積重量というやっかいなものがあり、実重量と容積重量のどちらか大きい方で運賃は決まります。
これは陸運でも、海運でも、空運でも同じです。
但し、
陸運では1m x 1m x 1m = 280kg
海運では1m x 1m x 1m = 1,000kg
空運では1m x 1m x 1m = 167kg
と換算係数に違いはあります。
なぜこの違いが生まれるのかについては、下記の記事で解説しています。
容積重量の換算方法が違うのはなぜ?トラック/航空/海上貨物別に解説
簡単にいうと、飛行機は大きくしないと飛べないということです。
ジャンボジェット機は180tもありますが、紙飛行機と同じ大きさに縮小すると0.5gになります。
これは紙飛行機の重さと同じくらいです。
つまり、飛行機の重さが決まればサイズも決まるということです。
エンジンや乗客などを埋めていって、残りのスペースが貨物スペースになりますが、これが載せられる重量に対して結構広いために、軽い比重の貨物しか載せられなくなってしまうのです。
なまじ広いスペースが貨物用に余ってしまったため、軽い貨物でもいいから沢山載せようという発想です。
海外通販で使う輸送モードは空運が中心になりますね。
そのため1m3=167kg、つまり比重が167kg/m3の貨物を委託することが、我々にとって最もお得になります。
なぜなら、これより比重が軽いと、「軽いけど大きいから運賃が高くなるよ」ということになり、逆にこれより比重が重いと、「小さいけど重いから運賃が高くなるよ」ということになるからです。
ちなみにDHLやFedEx等の国際宅配便では、容積重量を1m3=200kgで設定しています。
これはより比重の重たい貨物を運べる高性能の飛行機を使っているということではなく、貨物スペースを狭く保守的に見積もっているためです。
従って、DHLやFedExを使う場合は、海外通販で比重が200kg/m3の商品を注文するのが最もお得ということになります。
運賃負担力
世の中にはサイズが大きいけど安い商品もあれば、小さいけど高価な商品もあります。
お菓子やティッシュペーパーは前者で運賃負担力が低い、医薬品や宝石類は後者の代表格で運賃負担力が高いといいます。
物流会社としては廉価な商品を運ぶのも高価な商品を運ぶのもコストは変わらないため、商品価格に対する物流費の比率(物流コスト比率)は業界により大きく異なります。
菓子業界では物流コスト比率が7%くらいである一方、医薬品業界では1%くらいであったりします。
当然、医薬品業界のお客さんの方が金払いがいいため、大手物流会社はこぞって医薬品物流を強化しようとします。
海外通販でも同じです。
いくら日本で売っていない珍しい商品だからといって、現地価格が数百円の菓子類を買っても、運賃の方が高くついてしまっては全くお得感がありません。
それよりも、小さいけれども数万円するような商品なら、運賃なんて商品価格の数%に収まるかもしれないのでお得に決まっています。
輸入販売業者との運送費の差を縮めるには、運賃負担力の高い商品を買うのが鉄則です。
商品別シミュレーション
個人が海外通販でお得に買物をするためには、商品の比重と運賃負担力を考慮する必要があることがわかりました。
そこで、いくつかの商品についてシミュレーションして、どの商品カテゴリーを買うのがお得になるのかを調べてみましょう。
シミュレーションの方法
運動用シューズ、ゴルフバッグ、ドライバー、腕時計、コーヒーメーカー、掃除機、変圧器、ワインの各カテゴリーからそれぞれ1商品ずつを選んでサイズ/重量/価格を調べました。
サイズや重量については製品梱包した状態のものを調べるために、アマゾンのサイトを利用しました。
比重のシミュレーション
まずは容積重量を計算しました。
サイズから容積重量への換算は1m3=200kgとすると、換算式は次のようになります。
容積重量(kg)=縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)÷5,000
この容積重量と実重量の大きな方が課金重量となります。
課金重量=max(容積重量,実重量)
最後の列は比重を計算しました。
この値が200だと容積重量=実重量ということで、飛行機の貨物スペースを最も有効に使える貨物の比重ということになります。
我々消費者にとっても、最も無駄のない委託方法です。
この表を見ると、腕時計とワインと変圧器が比重200を超えていて、重量勝ちの商品です。
実際には製品梱包の外側に更に梱包することもあり、そうすると比重がもっと小さくなり、腕時計やワインは容積勝ちになる可能性が高くなります。
例えばワインの外側に2.5cm厚さの梱包材で保護するとすると、比重は半分以下の94になり、完全に容積勝ちになります。
また課金重量も1.1kgから2.34kgになり、運賃が簡単に倍近くになってしまいます。
DHLやFedEx等は、運送中に衝撃を受けることがあるので十分な梱包をすることを奨励していて、ご丁寧にワイン専用の梱包材を有料で提供していたりしますが、それよりも容積重量が増すことによる運賃収入増で二重に儲かるようになっています。
表を見るとわかるように、ほとんどの商品は容積勝ちです。
ですから、仮にこの上に更なる梱包をすると、その分だけ丸々運賃が上がります。
この表の中で梱包をしても運賃が上がらないのは、もともとかなりの重量勝ちである変圧器だけで、これなら5cmの厚みの梱包材で包んでも運賃は変わりません。
ただこのような商品は非常に稀で、ほとんどの商品は梱包をすればするだけ運賃に丸々乗ってきます。
これを避けるためには、①追加梱包しなくても送れる商品を選ぶか、②重量勝ちの商品を選ぶことが望まれます。
運賃負担力のシミュレーション
次に運賃負担力について調べてみます。
これを調べるには運賃と商品価格がわからないといけないのですが、運賃の相場は契約によって様々です。
DHLやFedExの定価運賃は目が飛び出るほど高いのですが、法人契約にすると会社によってはとても安くなります。
EMSの方が安いイメージですが、EMSの法人割引率はそこまで高くないので、DHLやFedExに方が安いケースも多くあります。
このように運賃は契約によりマチマチであるため、運賃の代わりに課金重量を使いました。
運賃は課金重量に比例するという前提であれば、課金重量÷商品価格は運賃÷商品価格に比例するからです。
この値が低いほど、商品価格に対する運賃の比率が低いということなので、運賃負担力が高いことになります。
結果は次のようになりました。
この中で最も運賃負担力が高いのは腕時計でした。
通常、課金重量のミニマムは1kgであることが多いため0.16kgを1kgとしても0.43となり、ダントツで運賃負担力が高い商品です。
逆にゴルフバックは容積重量が重すぎて、また変圧器は実重量が重すぎて、運賃負担力が低い商品になります。
EMSには容積重量がない
このようにDHLやFedExでは容積重量を考慮しないと、とんでもない運賃になってしまう可能性がありますが、EMSでは容積重量を計算しません。
すべて実重量での課金になります。
そのため、先の例でいうとゴルフバッグやドライバーのように軽くて嵩張る商品を送る場合には、EMSを利用するのが断然お得になります。
まとめ
- 梱包状態の比重が200kg/m3の商品が最もお得な運賃になる
- 一般的に梱包状態の比重が200kg/m3を超える商品(重量勝ちの商品)は非常に少ないため、
- なるべく重量勝ちに近い商品(比重の高い商品)を選ぶべき
- なるべく小さく高価な商品(運賃負担力の高い商品)を選ぶべき
- 比重の軽い商品を送る場合は、容積重量を考慮しないEMSを使うべき
これはあくまで国内で買うよりお得な値段で海外通販するためのテクニックです。
「私は自分の買いたいものを買う」
という方はスルーして下さい。