鴻池運輸に応募する前に知っておきたい会社の強みと弱みを徹底分析!

2021年7月30日

鴻池運輸は1880年創業の老舗物流会社です。

ユニークなのは、物流以外の請負サービス業務の割合が50%もあることです。

物流会社が荷主であるメーカーとの関係性を強化するために、生産工程にまで業務範囲を拡大していくことはよくあります。

しかし、鴻池運輸のそれはケタが違います。

鉄鋼メーカー食品メーカーが請負サービスの主な顧客です。

物流会社売上ランキング2021年版 10位)

 

請負サービス業務の狙い

なぜ物流会社にそのようなことができるのでしょうか?

それはメーカーのバリューチェーンにおいて、生産工程の付加価値が低くなっていることが理由です。

スマイルカーブと呼ばれますが、上流の研究開発や下流のマーケティングやアフターマーケットの業務と比較して、生産工程は余程のノウハウがない限りは付加価値が低くなります。

工場の空洞化が起こったり、アジアのEMS(製造請負会社)が流行ったりするのも、この文脈です。

 

鉄鋼メーカーの生産工程はほぼ自動化されていますが、現場でやらなければいけない調整作業サンプリングチェックなど人手に頼る作業も残っています。

また扱うモノが大きく製鉄所内も車で移動するほど大きいため、原料・中間品・製品を移動させるのも一苦労で、重機を操作する人手に頼る部分です。

また巨大な装置産業ですので、設備メンテナンスでも人手が必要になります。

 

食品メーカーでは鉄鋼メーカーほど自動化はされておらず、労働集約的な作業が多く残っている工場が多いため、外部の請負会社に業務を委託するケースは益々増えます。

 

このように荷主であるメーカーの生産工程にまで食い込めると、原材料や製品の物流を請け負い安くなります。

加えて工場に新しい設備を導入したり、新工場を建設したりする時に、大型機器の輸送や設置などの仕事を請け負える可能性も高くなります。

これはプロジェクトカーゴ輸送と呼ばれる分野で、それなりに大きな市場規模があり、利益率も高い仕事です。

 

鴻池運輸は1899年から鉄鋼メーカーに、1951年から食品メーカーに対して請負サービスを行っています。

そして最近では1991年に空港分野に、1994年からはメディカル分野にも進出していて、成長分野と位置付けています。

 

空港分野での中心はグランドハンドリング業務です。

中でも航空貨物を航空機からカーゴターミナルの間で移動させたり仕分けたりする作業は物流との親和性が高く、航空フォワーディングにおける付加価値の向上につながります。

生鮮品半導体などは貨物の扱いがデリケートですので、空港内作業も自社で管理できると作業品質のアピールになるのです。

 

メディカル分野は他の物流会社の参入も増えている成長分野です。

2005年施行の改正薬事法によって、医薬品や医療機器の製造業者・輸入業者は、製造行為を外部委託することができるようになりました。

この改正を受けて物流会社が、医薬品や医療機器などの保管業務や、添付文書などの封入作業などに進出する動きが活発化しています。

鴻池運輸が他の物流会社と違うのは、貸出用医療機器を病院から回収した後に洗浄メンテナンスを行って、また病院に配送するための物流センターを運営していたり、病院内にまで入り込んで院内物流を請け負っていたりする点です。

ここにも荷主の業務に深く食い込んで、本業の物流業務請負に生かす戦略が反映されています。

 

物流事業の注力分野

本業の物流では食品の定温物流に注力していく方針のようです。

この分野ではニチレイロジキユーソー流通システムが国内では大きなシェアを持っているため、鴻池運輸はニッチを狙う戦略だと思われます。

その中で、日本の生鮮品をアジアに輸出する分野では一定のシェアを抑えています。

 

アジアでは中間層が拡大しており、我々日本人からは考えられないような高価格で日本産の生鮮品を購入する現地人が結構います。

鴻池運輸はシンガポールや中国はもとより、2009年にはタイ、2012年にはインドカンボジア、2014年にはベトナムミャンマーに立て続けに進出しており、定温物流網を着々と構築しています。

残念ながらカンボジアからは撤退中ですが、その他の国では定温物流で一定の存在感があります。

ちなみに米国の定温物流には1985年からの長い歴史があり、ロサンゼルス地区の港湾における冷凍・冷蔵倉庫保管能力の60%近くを抑えているようです。

 

海外で成長領域と位置付けているのはインドです。

2012年に進出後、既に3社の現地法人がありますが、中でも2013年にメディアスホールディングスとの合弁で設立したCARNA MEDICAL DATABASE PVT.LTD.が注目です。

メディアスホールディングスは日本で院内物流用のITソリューションを提供している会社で、特にガーゼや注射器などの医療材料のデータベースには定評があります。

これらの医療材料は膨大な数のSKUがあり、サプライヤーの数も膨大です。

一方、病院でも正直、これらの管理に手間をかけている暇はないため、在庫管理が雑になったり、発注ミスも多く起こる分野です。

メディアスホールディングスが提供する医療材料データベースでは、ほとんどのSKUを網羅して統一の管理番号で管理可能にし、保険償還価格や販売価格の変化も即時反映するような仕組みがあります。

多くの病院にこのデータベース+管理システムを使ってもらうことにより、他の病院がいくらで同じ医療材料を購入しているかも分かるようになりますので、購買価格の低減にも役立ちます。

 

インドでは病院の設立ラッシュですが、このような医療材料の在庫管理は日本よりはるかに改善の余地があるため、そこに事業機会を見つけたようです。

メディアスホールディングスのITやコンサルティング力に、鴻池運輸が日本で培ってきた院内物流のノウハウを結びつけて院内物流の標準化作りを進め、将来的には病院外のメディカル物流も取り込んでいく狙いでしょう。

 

まとめ

このように物流業務と請負サービス業務を50:50で行っている鴻池運輸ですが、この経営戦略はうまく行っているようです。

KONOIKEグループについて より抜粋

 

上図の複合ソリューション事業には、請負サービス業務だけでなく、それに付随する輸送業務なども含まれているため50:50になっていませんが、請負サービス業務+派生業務=複合ソリューション事業の利益率が、純粋な物流事業のそれよりも高いことが分かります。

 

また2022年3月までの単年度目標でも、請負サービス業務の分野を基盤事業成長事業と位置付ける一方、物流業務の分野を収益改善事業にしています。

2021年3月期 有価証券報告書より抜粋

また今後は請負サービス業務の比率を60%に高めていくことも表明しています。

 

このように鴻池運輸は物流だけではなく、サプライチェーン全体に関与することによって事業を作っていく会社です。

SCM(サプライチェーンマネジメント)とはコンセプトが異なりますが、他の物流会社には余り見られないユニークなアプローチだと思います。