ニチレイロジグループ本社の売上高/事業内容/強みを物流業界経験者がわかりやすく解説します
ニチレイロジグループ本社はニチレイの中間持株会社で、2005年にニチレイの低温物流事業が分社する形で発足しました。
ニチレイの物流子会社としてではなく、元々独立した低温物流会社として発足したため、ニチレイ向けの内販とか外販といった区別はなく外販率の公表もしていませんが、ほとんどがニチレイ向け以外の仕事と思われます。
2009年にはキューソー流通システムを抜き、日本における食品物流の最大手になっています。
世界でも冷蔵倉庫の設備能力で第6位となっています。
ニチレイロジグループ本社の事業は地域保管事業、物流ネットワーク事業、海外事業の3つに分かれます。
順に見ていきましょう。
(物流会社売上ランキング2021年版 17位)
伝統があり利益率も高い地域保管事業
地産地消のニーズに応じて全国に80拠点
3つある主力事業のうち、地域保管事業は最も歴史の長い事業です。
冷蔵や冷凍の食品は元々地産地消の傾向があり、大消費地の近くに製品を保管するというニーズが限られます。
また食品工場には、ある程度の広さの原材料倉庫や製品倉庫がありますが、足りない場合は近くに倉庫を借ります。
そのため、全国各地に低温倉庫が欲しいというニーズは昔からありました。
ニチレイロジでは今でも全国約80か所にDC(Distribution Center)があります。
2020年度の決算内容によると、3事業の中で売上は全体の約1/3とそれほど大きくないものの、営業利益では過半を占めています。
また営業利益率は10%もあり、稼ぎ頭と言えます。
地域保管ニーズは今後減少見込み
しかし、今後の地域保管ニーズは減少傾向にあると言われています。
理由の一つは国内人口の減少ですが、それよりも大きいのは食品流通の構造変化です。
冷蔵食品(チルド)は国内に工場が残っていますが、冷凍食品(フローズン)はどんどん海外に移転しています。
また、外国の食品を食べたいという消費者も増えています。
そうすると、これまで海外から輸入されていた原材料を、地方の工場近くに保管するニーズが減少します。
代わりに入ってくる最終製品は、大消費地に送る量が圧倒的に多いため、地方で保管するニーズが減少します。
日本人の胃袋の大きさは変わりませんが、東京や大阪などでは倉庫が足りず、地方では倉庫が余るというインバランスが生じるのです。
また小売業界でチェーンストアによる寡占が起こりつつあるのも、地域倉庫のニーズが減少する原因の一つです。
今まで地方の卸売店や小売店に配送していた時には、広域小口配送のニーズがあったため地方に倉庫があると効率的でした。
ところがスーパーやドラッグストアなどのチェーンストアでは、彼らの用意した物流センターに一括で納品することになります。
それまでよりも、少ない納品先へ大口で配送するようになるため、地域倉庫のニーズが減少するのです。
チェーンストア向け3温度帯物流センターへの転換が課題
一方で悪いことばかりでなく、流通構造の変化による追い風もあります。
チェーンストアでは多数のメーカーから物流センターに納品してもらって、それを各店舗ごとに仕分けてまとめて配送します。
スーパーやドラッグストアでは常温のお菓子からチルドやフローズンまで置いていますので、それらをまとめて保管したり輸送したりできる物流会社は重宝されます。
これを3温度帯の物流と言います。
今まで常温の貨物しか扱ってこなかった物流会社が3温度帯に対応できるようにすることは難しくても、低温の貨物を扱ってきた物流会社にとっては容易いことです。
そのため、ニチレイロジのような低温物流会社は恩恵を受けられるのです。
但し、この恩恵を受けるためにはチェーンストアの物流センター業務を請け負う必要があります。
そのための事業が次に紹介する物流ネットワーク事業です。
今後の伸びが期待される物流ネットワーク事業
ニチレイロジの物流ネットワーク事業は更にTC事業、3PL事業、輸配送事業の3つに分かれます。
TC事業
TC事業とは、チェーンストアを対象としたトランスファーセンター(Transfer Center)を運営する事業です。
トランスファーセンターとはクロスドックセンター(Cross Dock Center)とも呼ばれますが、保管はせずに貨物の積み替えだけを行う配送センターのことです。
なぜそのようなことをするのかと言うと、一つはリードタイムが間に合うので近くに在庫を置いておく必要がないこと、もう一つはハブ&スポーク式で運ぶ方が安いことが理由です。
在庫はなるべく集約する方が少なくて済むので、リードタイムが許す限りDC(倉庫)は減らす方がいいのです。
ニチジレイロジにとりTC事業は他のメリットもあります。
低温倉庫というのは基本的に朝8時から夕方5時までの仕事です。
一方で、チェーンストアは朝の開店前納品が多いため、夜中から早朝の空いている時間を有効活用できるのです。
働いているスタッフは大変ですが、夜中に倉庫を使っても使わなくても倉庫にかかる固定費は変わりませんので、実質固定費の増分ゼロで仕事を請け負えます。
そのためコスト競争力が高く、景気の波も受けずに毎年順調に売上を伸ばしています。
3PL事業
次の3PL事業はチェーンストアの物流センターを請け負ったり、食品メーカーの物流を請け負って共同化することが柱です。
こちらも毎年20%くらいずつ成長しているようです。
輸配送事業
最後の輸配送事業は、全国80か所のDC、40か所のTC、メーカーや港湾を結ぶ幹線輸送が中心だと思われますが、ドライバー不足や働き方改革の機運もあって、ここ数年伸び悩んでいるようです。
NKトランスという実運送を担うグループ会社がありますので、ここを拡充して傭車不足という課題に対応していくと思われます。
地元企業とのガチンコ勝負で検討する海外事業
ニチレイロジの海外事業は売上ベースで約18%あります。
外国企業が手っ取り早く儲けられるフォワーディングに頼らず、現地のローカル企業とガチンコ勝負をしている割には健闘していると言えます。
中期的には25%まで拡大させる計画になっています。
地域別では欧州が大部分で、1988年からオランダを中心にM&Aでビジネスを拡大してきました。
アジアでは2004年に中国、2013年にタイ、2018年にマレーシアと、こちらも現地有力企業との合弁で低温物流事業を開始しています。
冷蔵・冷凍倉庫や冷蔵トラックを活用した低温物流網はコールドチェーンとも呼ばれますが、その需要は所得水準の向上によって爆発的に増えると言われています。
日本で培った作業品質をそのままアジアに移植すると、過剰品質となって現地企業にコスト面で太刀打ちできなくなる恐れもありますが、合弁パートナーの意見も取り入れながら妥協点を見つけていくのだと思います。
東南アジア、特にタイには1989年から進出している横浜冷凍(日本の冷蔵倉庫設備能力で2位)や1988年から進出している川崎汽船といった競合がいるため、後発ながら日本最大手のニチレイロジがどう巻き返すのか注目です。
まとめ:国内食品物流最大手なるも海外にも着々と布石
ニチレイロジは2005年にニチレイから分社して発足し、2009年にはキユーソー流通システムを抜いて日本の食品物流最大手になりましたが、それに先立つ2003年には日立との合弁で日立フーズ&ロジスティクスシステムズ(日立F&L)というシステム子会社を設立しています。
日立F&LはニチレイのITも受け持っていて、ニチレイロジだけのIT業務を受け持っているわけではありませんが、日立との合弁だけにIT力は物流業界の中でもハイレベルです。
今後は、蓄積したデータを活用したAI化も推進していくと思われます。
冷蔵倉庫業は装置産業ですので、自社でエンジニアリング部隊も抱えています。
その意味で、理系の活躍の場も大いにあるといえるでしょう。