べき乗分布に従う売上高ランキングを対数にすると直線グラフになるわけ
パレートの法則はべき乗分布に従う
世の中の多くの現象は正規分布に従うと言われていますが、べき乗分布に従う分布もあります。
例えば、世の中で売られている商品は、皆一様に売れているのではなくて、上位のほんの20%ほどの商品で販売量全体の80%以上を占めると言われています。
また所得の分布についてもそうで、米国では上位10%の金持ちが全体所得の50%以上を占めていると言われます。
これをパレートの法則と言います。
パレートの法則に従う現象は、べき乗分布に従います。
売上高ランキングもべき乗分布になる
ということは、会社の売上ランキングも所得の分布と同じようにパレートの法則に従うので、べき乗分布になりそうです。
【2021年版】日本の3PL企業ランキング63社!|7つの財務指標で徹底比較
この売上ランキングデータで、それを確かめてみましょう。
ランキングをそのままグラフにすると、次のようになります。
確かにべき乗分布になっています。
よく見ると日本通運、ヤマト運輸、SGホールディングスが1兆円越えで抜け出ていて、その次に6千億円クラスの会社が6社、その次はなだらかに減っていくようなグラフです。
べき乗分布は対数グラフにすると直線になる
次に、対数の使い方【パレートの法則から学ぶ】で紹介したように、y軸(売上)だけ対数を取ったグラフにしてみます。
対数は10を底とする常用対数とします。
ほぼ直線的に減少していくグラフになりました。
ランキングが直線で表せるなんて不思議ですね。
それでは、これの回帰直線を引いてみましょう。
回帰直線の引き方については、下記の記事で解説しています。
https://rikei-logistics.com/post-2729
ほぼ直線で近似できました。
なぜ対数グラフにすると直線になるのか?
世の中の多くの現象は複雑系です。
複雑系とは、色々な要因が複雑に絡み合って、式では結果を簡単に予測することが難しい現象のことを言います。
このような現象は確率的に予想するしかありません。
売上が上位の会社というのは、昔、何か有利な条件を与えられていたとか、誰も考えつかなかったような良いアイデアを持っていたとか、とてつもないバイタリティーを持ったカリスマがいたとか、勝つ確率が高いサイコロを持ってたのでしょう。
そして他の会社が気づかない間、もしくは気づいていても実行力がない間に、何度もそのイカサマサイコロを振って高い確率で勝ち続けます。
一度勝つと売上が増えます。
そして、次のゲームは増えた売上からスタートします。
そのため、競合がいない間にこのゲームを繰り返せば、乗数的に売上が増えることになります。
競合がイカサマサイコロに気づいて真似をしても、売上が小さいところからスタートしますので追いつくことはできません。
追いつくには何か斬新なアイデアか、良い競争条件を見つけるしかありません。
もうひとつ重要なことは、一度に大勝はできないことです。
その時点での会社のリソースの範囲内でしか、売上は増えません。
いきなり5倍も増やせないのです。
1.1倍とか1.2倍というように、小さいながらも乗数的に増えますので、その時点での売上の大きい会社ほど絶対額では多く増えます。
このように一度勝ったら勝ったところから次のゲームをスタートでき、勝てば乗数的に増えるため、上位の会社はどんどん売上が増えるのです。
日本のように競争環境が比較的自由な国では、他社がイカサマサイコロを持っていたら、それを真似しようとする会社が現れます。
どれくらい現れるかも確率的ですので、長い期間で見ると均されていきます。
そのため、ランキングが隣同士の会社の売上の比率は同じくらいになります。
比率が同じということは、対数にすると差が等しいということです。
試しに隣同士の対数の差を調べてみると、下図のように0~0.045の間にほとんどの差が含まれます。
差が同じということは、グラフにすると直線になります。
これが売上の対数を取ると、直線のグラフになる理由です。
べき乗分布は対数にすると正規分布にもなる
次に、この売上ランキングデータをヒストグラムにしてみましょう。
ヒストグラムの描き方はこちら⇩
Excelでヒストグラムを描く二通りの方法。正規分布の近似曲線も併せて表示!
【売上データをそのまま横軸に取った場合のヒストグラム】
このように左側に寄ったいびつな形のグラフになります。
次に、売上を対数にしてヒストグラムを描いてみましょう。
【売上データの対数を横軸に取った場合のヒストグラム】
なんと正規分布になりました!
この性質を利用して、べき乗分布するデータを偏差値で評価できるようになります。
詳しくはこちらを参照下さい。