SBSホールディングスの売上高/事業内容/強みを物流業界経験者がわかりやすく解説
SBSホールディングスは1987年に設立された関東即配が前身です。
現社長の鎌田氏が、佐川急便で8年間働いた資金を元に立ち上げました。
その後、物流会社としては急速に成長し、2020年12月期の売上は2,572億円、今期は3,800億円を計画しています。
これが実現すると、物流会社ランキングが13位から10位に食い込むことになります
ここまで成長しているSBSホールディングスのキーワードはM&Aと3PL事業です。
順に見ていきましょう。
商圏やノウハウを持つ物流子会社を積極的にM&A
怒涛のM&Aが高成長の源
SBSは2003年にJASDAQに上場してから、矢継ぎ早にM&Aをしてきました。
その途中、2013年には東証一部に上場しています。
ターゲットは主に荷主の物流子会社で、主なM&A歴は下記の通りです。
2004年 雪印物流(現SBSフレック)
2005年 東急ロジスティック(現SBSロジコム)
2005年 日本貨物急送(現SBSフレイトサービス)
2006年 全通(現SBSゼンツウ)
2010年 ビクターロジスティクス
2011年 日本レコードセンター
2011年 Atlas Logistics(インド)
2014年 Transpole Logistics(インド)
2018年 リコーロジスティクス(現SBS三愛ロジスティクス)
2020年 東芝ロジスティクス(現SBS東芝ロジスティクス)
雪印物流を買収した頃のSBSの売上は約200億円で、雪印物流のそれは約380億円だったため、2倍近く大きな会社を買収したことになります。
続く東急ロジスティックも300億円以上の売上があったので、これも大きな買収です。
2018年に売上700億円のリコーロジスティクスを買収した際は売上1,500億円になっていましたが、これも大きな買収です。
2020年に買収した東芝ロジスティクスも売上1,000億円ですので、これまた大きな買収です。
このようにM&Aにより会社の規模を拡大してきたと言えますが、財閥系で自動的に貨物がもらえる物流会社と違い、独立系の物流会社というのは皆そうだとも言えます。
ただM&Aの規模とスピードは、現代の日本の物流会社としては突出しています。
リコーロジスティクス、東芝ロジスティクスと大きなM&Aが続きましたが、この規模の優良な物流子会社は今後はなかなか出てこないと言われています。
またこの規模のM&Aだと、システム統合などに時間がかかるため、立て続けにできないという事情もあります。
そこで当面は、10億円規模で後継者不足に悩みを抱える中小運送業者を狙って、今後益々深刻化する傭車不足に対応する計画のようです。
アマゾンのデリバリープロバイダーとしてEC配送も
首都圏では既にSBS即配サポートが祖業である当日即配サービスを、売上330億円規模で手掛けています。
このネットワークを武器にアマゾンのデリバリープロバイダー9社のうちの1社になっていますが、M&Aにより他の地域も狙っているのかもしれません。
もしくは、3PL事業の足回りとしての幹線輸送網の強化を狙っているのかもしれません。
これは後継者不足に悩む企業の救済という点で社会問題解決につながりますが、同時に今後ドライバー不足で傭車が難しくなる状況への布石とも言えるでしょう。
業界別物流プラットフォームを目指す3PL事業
SBSが物流子会社を中心にM&Aをしてきたというのは、時代の流れに乗っています。
日本のメーカー多くは物流子会社を作ってグループの物流コストを内部化してきましたが、国内市場の長期的な縮小が避けられない一方、ドライバー不足が安定供給を脅かすほど深刻化していることや、流通構造が変化してきていることから相次いで物流子会社の在り方を見直しています。
例えば家電業界では大手メーカーの物流子会社のほとんどは、物流専業会社にM&Aされています。
流通構造の変化としては、昔は各メーカー系列の流通チャネルだったのが、チェーンストアが台頭してきてそれが崩されたことがあります。
それまでは各メーカーの納品先は重ならないことが多かったのですが、チェーンストアでは彼らの物流センターに一括納品となるため、納品先が重なります。
チェーンストアとしても各社ばらばらに持ってこられるよりも、まとめて納品してもらう方が楽なので、自然と共同配送という流れになります。
そこで各社は、他社との差別化にならない物流は共同化するために、業界で物流プラットフォームを作ろうという機運になります。
それには、第三者である物流専業会社に任せた方がよいということで、物流子会社の売却ムードになっていたのです。
SBSはそれにうまく乗ったと言えます。
リコーロジスティクスや東芝ロジスティクスはほぼ同じ業界と言えますので、今後は重複拠点を統合しながら電機業界の物流プラットフォームを作っていくものと予想されます。
同様に、雪印物流と全農を前身とするSBSフレックとSBSゼンツウは食品物流プラットフォームを、東急ロジスティックを前身とするSBSロジコムは日用ドライ品の物流プラットフォームを構築していくものと思われます。
実は、このような業界別の物流プラットフォームは思ったほど簡単ではないことも最近分かってきています。
同じ業界だと季節ごとの波動や、時間帯ごとの波動が重なるため、繁忙期にはキャパ不足に、閑散期は余剰人員が出てしまいます。
また貨物の容積重量も近いため、トラックや船等に積み合せる時の効果も限られます。
>> 容積勝ち貨物と重量勝ち貨物、混載して物流コスト削減になる条件は?
そこをうまくやっているのが大塚倉庫です。
同じ業界、もしくは違う業界でも納品先が重なる場合には、物量波動や容積重量が違う貨物を扱う荷主にターゲットを絞っています。
M&Aで手に入れた業界別のノウハウと、リコーや東芝など大手荷主の物量を、今後どのように組み合わせてシナジーを出していくのか注目です。