山九に応募する前に知っておきたい会社の強みと弱みを徹底解説!

2021年9月15日

阪神甲子園球場のバックスクリーン下の目立つ位置に黄色で看板が出ている山九

一体何の会社だろう?と思う社名ですが、物流業界の中でも異色のビジネスモデルを持つ会社です。

また、物流会社売上ランキング2021年版でも堂々9位の物流大手です。

 

まずセグメント別の売上高を見てみましょう。

2021年3月期決算説明会資料より抜粋

 

機工事業が半分くらいの比率を占めています。

これは何でしょうか?

 

山九にはロジスティクス事業プラントエンジニアリング事業オペレーションサポート事業の3つの大きな柱があります。

ロジスティクス事業は一般的な物流事業で、主にメーカー向けの物流が中心です。

プラントエンジニアリング事業は、鉄鋼メーカーや石油化学メーカーのプラントを建設したり設備を据え付けたり、メンテナンスを請け負う仕事です。

これが先ほどの機工事業の正体です。

オペレーションサポート事業は、鉄鋼メーカーや石油化学メーカーの工場の中で原料、資材、製品の構内輸送や保管業務を請け負う仕事です。

 

山九の創業は1918年で、官営八幡製鉄所が中国や朝鮮から鉄鉱石や石炭などの原料を輸入する調達物流を請け負ったのが始まりです。

その後、製鉄所内の構内作業や大型機器の搬入据え付けメンテナンス等を請け負うようになりました。

そして、日本が高度成長期に入り石油コンビナートが建設されるようになって、鉄鋼メーカーで培った経験を活かして石油化学メーカー向けにも同様の業務を手掛けるようになりました。

それに伴い工場外の物流も請け負うようになり、現在につながる一般的な物流事業が始まりました。

その後、メーカー物流の最上流から川下の方へと事業領域を拡大して、日用品衣料品電機自動車部品等へ物流事業の領域を広げてきました。

 

このような経緯から、工場建設の段階から顧客に関わり、メンテナンスや構内作業も請け負うことによって顧客との関係性を深め、物流も併せて請け負っていくというのが山九の基本的な戦略です。

では、プラントエンジニアリング事業やオペレーションサポート事業はロジスティクス事業を請け負うための餌なのか?というとそうでもありません。

それは次のグラフを見ると分かります。

2021年3月期決算説明会資料より抜粋

 

これはセグメント別の営業利益の推移ですが、先ほど出てきた売上高の推移と比べてみてください。

売上では物流事業の方が多いのに、営業利益では機工事業が大部分を占めます

営業利益率で比較すると次のようになります。

2021年3月期決算説明会資料より抜粋

 

機工事業の収益性は物流事業の概ね2倍以上あることが分かります。

つまり、山九は物流会社に分類されていますが、プラントエンジニアリングで儲けている会社なのです。

日本のプラントエンジニアリング業界の3強の一角を占める東洋エンジニアリングの2020年度の売上高が1,840億円ですので、山九のプラントエンジニアリングだけの売上2,396億円がいかに立派な数字かが分かります。

(オペレーションサポート事業のうち、構内物流は物流事業、それ以外は機工事業に含まれる)

 

このようなビジネスモデルの山九ですので、鉄鋼メーカーや石油化学メーカーの海外進出に合わせて早い時期からアジアを中心に海外進出しています。

顧客の工場建設から参画することにより設備の調達物流に絡めて輸入フォワーディングを、構内物流の延長で製品輸出のための輸出フォワーディングを請け負っていくのが基本戦略ですが、中国では物流から入るという逆のアプローチを取っています。

 

中国に進出したのは1993年と早く、2003年には売上が400億円にまで急成長したと言われています。

これは中国物流の御三家として並び称される日本通運と同規模の売上高です。

機工事業なしでここまで物流事業を拡大できたというのは、山九の物流事業の実力が侮れないことを示しています。

 

物流会社に限らず、日本では大手すぎて相手にしてもらえないような会社でも、海外では容易に現地法人のトップと近しくなれるため、大手と取引を開始するチャンスに恵まれています。

山九も例外ではありません。

日本では自動車部品物流を取り扱った経験がほとんどなかったのに、2004年にトヨタ系のティア1サプライヤーからJITミルクランのパートナーとしての指名が入ったのです。

さすがに最初の数年間はトラブル続きで赤字が続いたもの、その後は軌道に乗り、幹線輸送フォワーディングにまで受託範囲が広がったそうです。

また、この実績が呼び水となり、トヨタ以外の自動車メーカーの顧客も増えたようです。

 

山九は1986年に親会社だった中村汽船が倒産し、その際の負債を全額負担させられました。

そのため有利子負債が一時期1,600億円規模まで膨らみ、2001年度の自己資本比率8.9%まで落ち込みました。

またその当時の営業利益率は2.4%しかありませんでした。

 

その後、業績が好転して、2011年度には自己資本比率36.7%営業利益率5.0%に、2021年度には自己資本比率51.4%営業利益率6.4%まで改善しています。

従業員一人当たりの営業利益額では274万円で、これは物流業界3です。

>> 【一人当たり営業利益+売上高】物流会社を偏差値でランキング!|収穫逓減の法則の事例

 

通常、売上規模が大きくなると収穫逓減の法則が働いて利益率が悪化するところですが、山九ほどの売上がありながら利益率が高いのは、やはりプラントエンジニアリング事業の収益性の高さが効いています。

とはいえ、プラントエンジニアリング業界も冬の時代で、今後国内の伸びは期待できません。

海外では引き続き需要はあるものの、中韓勢からのコスト圧力は強く厳しい戦いになると見られています。

 

山九は顧客である日本の重厚長大メーカーに寄り添い、痒い所に手が届くサービスを売りにしてきましたので、それらの企業の成長に制約されます。

また海外でも日本における評判の高さを売りにしているため、顧客の大部分は日系であると見られています。

今後は非日系の顧客にまで事業を広げながら、アジアの成長を取り込んでいけるかどうかが成長を占うカギになるでしょう。