上場物流会社の一人当たり営業利益+売上高を偏差値でランキングしてみた。

2024年5月19日

同じ1億円の営業利益でも、従業員100人の中小企業と10,000人の大企業とでは意味合いが全く異なります。

【2021年最新版】物流会社の売上高トップ63社をランキング!|7つの財務指標で徹底比較

で営業利益のランキングを作成しましたので、このデータに従業員数のデータを合体させてまずは一人当たり営業利益のランキングを作成してみましょう。

 

◆仕事や勉強の息抜きに。。。

一人当たり営業利益ランキング

従業員数は上場企業であれば有価証券報告書に載っています。

これは正規社員の人数ですが、非正規社員の人数も「平均臨時雇用者数」として載っています。

所謂パートさんもこれに含まれます。

「4時間くらいの短時間とか、週に数日しか働かないパートさんも一人としてカウントするの?」

という疑問を持つと思いますが、FTE当量(Full-Time Equivalent)といって、週5日8時間労働を一人として換算した人数が記載されていますので、正規社員の人数と前提は同じです。

従って、平均臨時雇用者数も加えた人数で営業利益を割ることとします。

 

ランキングは次のようになりました。

(単位:万円)

会社名

一人当たり営業利益

1 上組 563
2 澁澤倉庫 294
3 山九 274
4 丸全昭和運輸 257
5 住友倉庫 221
6 内外トランスライン 217
7 中央倉庫 209
8 名港海運 194
9 横浜冷凍 194
10 近鉄エクスプレス 169
11 ハマキョウレックス 168
12 三菱倉庫 163
13 三井倉庫ホールディングス 149
14 日本トランスシティ 148
15 安田倉庫 129
16 トランコム 123
17 ケイヒン 117
18 ニッコンホールディングス 114
19 キムラユニティー 107
20 SGホールディングス 105
21 丸和運輸機関 100
22 日立物流 99
23 日本通運 89
24 福山通運 83
25 伊勢湾海運 82
26 東陽倉庫 75
27 センコーグループホールディングス 69
28 セイノーホールディングス 64
29 SBSホールディングス 56
30 アルプス物流 51
31 ゼロ 45
32 C&Fロジホールディングス 45
33 ヤマトホールディングス 41
34 日新 38
35 名鉄運輸 36
36 宇徳 25
37 キユーソー流通システム 22
38 鴻池運輸 16
39 日本ロジテム 15

 

グラフにすると次のようになります。

 

一位の上組だけ抜けていますね。

一人当たり営業利益が高いということは、労働生産性の高い(手間のかからない)仕事を請け負っていることを示します。

上組は港湾荷役、コンテナターミナル運営、上屋保管等の権益で守られた港湾関連業務が中心ですので、参入障壁が高くライバルが少ない業務を行っているからだと思われます。

 

一人当たり営業利益が高い会社は中堅規模が多い

上位20社の会社を眺めてみると、売上高では概ね中堅以下の会社が大部分を占めていることが分かります。

売上高で上位3社である日本通運23位ヤマトホールディングス33位SGホールディングス20位です。

大手であれば手間のかからない仕事を選り好みできそうなので、一人当たり営業利益も高くなりそうなものですが、逆になっているようです。

これは「収穫逓減の法則」が働いているのだと考えることができます。

1兆円規模の売上を作るには、おいしい仕事だけでは足りなく、手間のかかる仕事も取っていかないとダメなのでしょう。

 

それでは、この一人当たり営業利益が高い会社を良い会社と言っていいでしょうか?

それもちょっと違う気がしますね。

 

一人当たり営業利益に売上高も加味した総合ランキングを作る

単純平均ではフェアでない

そこで、売上高のランキングも加味したランキングを作ってみたいと思います。

一番簡単なのは、売上高ランキングの順位と一人当たり営業利益ランキングの順位を足して、小さい順に並べれば総合ランキングが作れそうです。

 

でもちょっと待って下さい。

 

一人当たり営業利益ランキングでは上組が飛びぬけていましたね。

同じ一位でも「ギリギリ一位」と「ダントツ一位」では重みが違います。

その重みも考慮しないとフェアとはいえません。

上組のダントツ一位は、どのように表せるでしょうか?

 

標準偏差で表せるダントツ度

平均からの差で表せそうですね。

でも、平均からの差が100だとしても、

平均=100、上組のデータ=200

平均=1,000、上組のデータ=1,100

とでは100の重みが全く違います。

前者はダントツ感がありますが、後者はそうではありませんね。

 

このような時は、ばらつき度合を表す標準偏差を使います。

標準偏差がばらつきを表すのに丁度いい理由をわかりやすく解説します。

 

この記事を読んでいただくと、「データと平均の差が標準偏差何個分に相当するか」でダントツ度合を表すことができることが分かると思います。

39社の一人当たり営業利益の平均標準偏差を計算してみると、次のようになります。

 

平均=127

標準偏差=104

 

上組のデータは563ですので、

(563-127)÷104=4.2

となり、データと平均の差が標準偏差4.2個分に相当します。

ほぼ平均に近い安田倉庫のデータは129ですが、この場合、データと平均の差が標準偏差0.02個分になります。

従って、このやり方でダントツ度合を表すことができそうです。

 

対数でべき乗分布を正規分布に変換

しかし、このやり方には問題があります。

データの分布が正規分布ではないからです。

一人当たり営業利益のデータ分布をグラフにすると次のようになります。

 

とても正規分布には見えませんね。

年収の分布や会社の売上高ランキングもそうですが、このような分布はべき乗分布に従うのです。

 

このような場合は対数を取れば正規分布に近くなります。

そこで10を底とする常用対数を取った後にグラフにしてみると次のようになります。

 

正規分布に近くなりましたので、これで標準偏差を使えるようになりました。

対数を取った後の平均は1.97標準偏差は0.36です。

上組のデータの対数を取るとlog(563,10)=2.75になりますので、

(2.75-1.97)÷0.36=2.15

となり、データと平均の差が標準偏差2.15個分に相当します。

 

偏差値でも表せるダントツ度

ダントツ度を表すもう一つのやり方が「偏差値」です。

学生の頃、よく聞いたあの偏差値です。

普通の人は偏差値50くらい、頭のいい人は偏差値70くらいでしたね。

 

この偏差値は、データが平均に等しい時は偏差値50データが平均より標準偏差1個分大きい時は偏差値60になるようにできています。

つまり、データと平均の差の中に標準偏差がa個入っている時、偏差値は50±10aになるように変換しているのです。

 

では上組の偏差値を計算してみましょう。

偏差値もデータが正規分布であることを前提としていますので、一人当たり営業利益の対数で計算します。

データと平均の間に標準偏差が2.15分含まれていましたね。

ですので、上組の偏差値は

50+2.15×10=71.5

となります。

頭のいい人と同じくらいの希少価値があるということです。

 

偏差値で総合ランキング

このように偏差値により、集団の中での位置を適切に評価できることが分かりました。

ですから、一人当たり営業利益の偏差値と、売上高の偏差値を計算してそれらの平均を取れば、二つの指標の総合ランキングが作れそうですね。

それではやってみましょう。

売上高もべき乗分布に従いますので、対数を取ることに注意です。

対数を取った後に偏差値を計算すると次のようになります。

(単位:万円)

会社名

売上高偏差値

一人当たり

売上高偏差値

総合偏差値

1 上組 55 72 63
2 山九 61 63 62
3 日本通運 73 49 61
4 SGホールディングス 69 51 60
5 近鉄エクスプレス 62 57 60
6 日立物流 63 51 57
7 住友倉庫 52 60 56
8 ヤマトホールディングス 71 40 56
9 丸全昭和運輸 48 62 55
10 三井倉庫ホールディングス 54 56 55
11 三菱倉庫 53 57 55
12 センコーグループホールディングス 62 46 54
13 セイノーホールディングス 62 45 54
14 横浜冷凍 47 59 53
15 澁澤倉庫 42 64 53
16 ハマキョウレックス 48 57 52
17 福山通運 55 48 52
18 ニッコンホールディングス 51 52 52
19 トランコム 50 53 52
20 日本トランスシティ 46 55 51
21 名港海運 43 59 51
22 SBSホールディングス 54 44 49
23 丸和運輸機関 47 51 49
24 中央倉庫 34 60 47
25 安田倉庫 40 54 47
26 内外トランスライン 33 60 46
27 ケイヒン 40 53 46
28 キムラユニティー 40 52 46
29 日新 50 39 45
30 アルプス物流 46 43 44
31 C&Fロジホールディングス 47 41 44
32 伊勢湾海運 38 48 43
33 ゼロ 45 41 43
34 名鉄運輸 47 38 43
35 鴻池運輸 56 29 42
36 キユーソー流通システム 51 32 42
37 東陽倉庫 35 47 41
38 宇徳 40 34 37
39 日本ロジテム 41 28 34

 

上組は一人当たり営業利益ではダントツで売上も上位ですので、両指標を併せた総合ランキングも1位になりました。

山九は両指標とも上位に位置するため総合ランキング2位、日本通運は売上ダントツ、一人当たり営業利益はそこそこで総合3位です。

 

このように偏差値を使えば複数の指標を同じ土俵で評価することができて便利です。

このような場面はランキングに限らず、日常業務でも多く遭遇すると思いますので、是非いろいろなことに応用してみて下さい。