セイノーホールディングスの売上高/事業内容/強みを物流業界経験者がわかりやすく解説
西濃運輸は特別積合せ貨物運送のパイオニア
セイノーホールディングスの中核会社である西濃運輸は、太平戦争中の戦時統合により発足した西濃トラック運輸が前身です。
日本で初めて全国規模の特別積合せ貨物運送を始めた会社として有名です。
ヤマト運輸は、この特別積合せ貨物運送サービスに対抗するために宅急便を始めたとされています。
このように特別積合せ貨物運送の最大手ですが、最近はそのネットワークを活用しながら色々な事業を立ち上げています。
キーワードはO.P.P.(オープン・パブリック・プラットフォーム)、ロジ・トランス、LCC宅配の3つです。
順に見ていきましょう。
(物流会社売上ランキング2021年版 7位)
(3PL世界売上ランキング2021年版 24位)
物流業界の効率化を目指すO.P.P.(オープン・パブリック・プラットフォーム)
セイノーは物流業界全体としての効率化を図るために、O.P.P.(オープン・パブリック・プラットフォーム)の構築を提唱しています。
これには2つの段階があるようです。
物流会社との水平統合による積載率向上
1段階目はセイノー単体ではなく、他の物流会社との水平統合により、より顧客にとって最適な輸送手段を提供しようというものです。
一つの例が2019年に発表したSGホールディングスとの業務提携です。
SGホールディグスは一つのトラックに満たない中ロット貨物向けのサービスとして、SGパレットチャーターというサービスを売っています。
しかし、SGは元々宅配便用のネットワークですので、宅配便のサイズ規格を超えるような大物の貨物を一緒にトラックに積むと積載効率が下がってしまいます。
また、需要の少ない地方向けもトラックの積載効率が低くなってしまいます。
その点、セイノーは元々大物貨物を沢山扱っていますし、2006年からヤマト運輸や日本通運とJITBOX チャーター便をやっていますので、そのトラックの空スペースを使えます。
このように物流会社がそれぞれ垂直統合でやるより、協力できる分野では手を組む方が社会全体のためになります。
荷主企業とのオープンプラットフォームによる無在庫物流
O.P.P.の2段階目は、荷主企業とのオープンプラットフォームです。
セイノーでは商流需給と物流需給の統合と呼んでいます。
在庫というのは、生産需給を物流需給に合わせられないためにできてしまいます。
生産ロットと輸送ロットの大きさを同じにできて、リードタイムも間に合えば在庫は必要ありません。
従って、生産側が物流側の状況をネットワークで共有できれば、よりよい生産計画を立てられ流通在庫を減らせるというわけです。
セイノーの目指す「無在庫物流」はハードルが高いと思いますが、考え方としてはCPFR(Collaborative planning, forecasting, and replenishment)と同じです。
このように、他の物流会社や荷主も巻き込んだオープンプラットフォームを主導するという考え方は、ヤマト運輸と同じです。
違いは、セイノーは中ロット輸送で、ヤマトはラストワンマイルデリバリーで目指そうとしているという点です。
但し、セイノーはラストワンマイルデリバリーでも後に述べる「LCC宅配」でオープンプラットフォームを作ろうとしています。
倉庫併設型ターミナルを活かすロジ・トランス
セイノーは中期経営計画で〝特積みのセイノー〟から〝ロジのセイノー〟へを掲げています。
その中心となるのが、ロジ・トランスと呼ぶ倉庫併設型ターミナルです。
全国に多数ある輸送用のトラックターミナルの上層階を保管エリアとすることにより、出荷の締切時間を遅らせ、顧客サービスレベルの向上や出荷作業の平準化を図ることができるサービスです。
これはヤマト運輸やSGホールディングスのような宅配会社のみならず、福山通運や名鉄運輸などの特別積合せ貨物運送業者も取っている戦略です。
セイノーもヤマトやSGと同じく、無人化を進めるためにいくつかの業界に特化する戦略を採るようです。
特化する業界はエレクトロニクス、ヘルスケア、航空部品、リテールなどの物流費負担能力の高い製品を扱う業界としています。
2022年度末までに20万坪までロジ・トランス拠点を拡大する予定です¥。
ラストワンマイルデリバリーの強化を目指すLCC宅配
これはネット販売の伸びにより、B to C市場が伸びている構造変化が背景になります。
中ロット貨物の雄であるセイノーは、B to B市場に頼ってきた事業構造であるといえます。
それに対するセイノーの戦略は、ラストワンマイルデリバリーの強化です。
この分野では、本当に沢山の手を打ってきています。
SkyHub(スカイハブ)
過疎地でのドローンによるラストワンマイルデリバリーを、ドローンのスタートアップ企業であるエアロネクスト社を、セイノーのO.P.P.のプラットフォームに載せることにより実現しようとするもの。
O.P.P.を業界標準のシステムプラットフォームとした上で、ドローンとのシステム接続も標準化していこうとする野心的な計画。
スパイダーデリバリー
狭商圏にある複数の店舗出荷型宅配ショップから、蜘蛛の巣のように張り巡らせたルートでラストワンマイルデリバリーを担う。
セイノーグループのベクトルワンが自社開発した自動配車AIアプリDSS(デリバリー・ソリューション・サース)で効率的な配車を行う。
O.P.P.によって地域内の様々な出荷依頼を集約し、DSSによる効率的な配車を行うことが特徴。
2019年からはライフコーポレーションとも提携している。
ARUU(アルー)
スパイダーデリバリーを処方箋薬局からの宅配に応用したサービス。
コロナ禍の2020年から北海道で開始。
OCCO(オッコ)
セイノーグループのLOCCOは宅配クライシスに対応するため、LCC宅配の開発を進めている。
セイノーの充実した幹線輸送網に、ギグワーカーを使ったラストワンマイルデリバリーを組み合わせることで実現しようとしている。
そのカギとなるのが、先に紹介したDSS(デリバリー・ソリューション・サース)である。
AIによるルート最適化の他、スマホ画面上に配達先ごとの注意点を表示させるなど初心者でもすぐに戦力化できる工夫を施している。
コロナ禍での非対面での受け取り需要や、不在による再配達の非効率解消のため、置き配サービスであるOCCO(オッコ)も同時展開している。
尚、センコーはギグワーカーを使ってフリーペーパーの配布を行ってきたリビングプロシードを2020年に買収し、約10,000人のギグワーカーネットワークを手に入れている。
GENie(ジーニー)
セブンイレブンは2000年から店舗出荷型宅配サービスを、セイノーは2011年から買い物弱者向けの宅配サービスを手掛けていた。
セイノーが2016年にセブンイレブン向けの宅配専用会社GENie(ジーニー)を立ち上げ、ラストワンマイルデリバリーを担っている。
宅配市場はヤマト、佐川、日本郵便の3強体制が、アマゾンが組織したデリバリープロバイダや自社配送網によって崩され始めていますが、少なくとも近距離の配送で宅配便を使うのは割高です。
今後はその市場が伸びると見て、セイノーは着々と、しかし迅速に手を打っています。